少し前の話になるのですが、2024年10月に開業した大型複合施設「長崎スタジアムシティ」様よりご依頼を受けましたフロアガイド制作の事例をご紹介します。
施設はサッカースタジアム、アリーナ、ホテル、オフィス、商業施設の5つのエリアで構成される非常にスケールの大きな施設でした。
今回、フロアマップを作成するにあたり、注意した点や工夫した点など、
感じたことを書いていこうと思います。
まず最初に、完成したすべての階のフロアマップを、縦に重ねてつくったイメージを見てください。
(実際にはこのような状態で使用していません。フロアの構成をわかりやすくするためのイメージとして作っています)
敷地内に5種類の建物があり、それぞれ階数が違います。敷地も広く、様々な種類の構造物があることがわかります。サッカースタジアムを中心に、アリーナ(ブルー)、商業施設(黄色)、オフィス(グレー)、一番高いところがホテル棟(ムラサキ色)で地上14階建てです。

以下が実際運用されているフロアマップです。
「プラチナモール」というシステム上で使用されています。
(※システム自体の開発には関与していませんが、マップとして活用されています)

このシステムでは、ユーザーの現在地から目的地までの最短ルートが表示されたり、店舗ごとの混雑状況がリアルタイムでわかったりと、非常に高機能です。
商業施設のDXっていうんでしょうか。すごいなあと思います。
興味ある方は長崎スタジアムシティのフロアマップをご覧ください。
デザイズミが担当させていただいたのは、このプラチナモールで使用するマップデータです。
Adobe イラストレータ形式のデータで制作します。
制作手順は以下の通り。
- 建築平面図をもとにしたトレース作業
- 各エリアごとの配色設計
- 舗装路面の表示や植栽の反映
建築平面図をもとにしたトレース作業
建築の平面図は、基本的に設計者向けの資料です。
図面通りに忠実にトレースすれば、正確に表現はできても、細かすぎて見づらくなるので
「どこまでシンプルにすっきり見せることができるか」を追求することになります。
さらに、お客さんが通らない、スタッフ専用の動線や区画、
いわゆるバックヤードをどこまで省略できるかということも重要なポイントです。
今回は現地に出向くことができなかったので、支給された図面と写真だけを手がかりに、
可能な限り“お客様目線”を想像しながら描き起こしました。
クライアントと何度も相談しながら調整を進めましたが、
担当の方も、施設のオープン前のため時間のない中かなりご苦労されていたと思います。
また、屋上には足湯やジップライン(楽しそう!)の発着場などがありますが、
平面図の中に影をつけたりしてすこし立体的に見せています。
さらにもうひとつ、スタジアム側の観客席の表現にも時間をかけました。
図面上ではイスの並びが繰り返しのように見えますが、実際には前の列のちょうど後ろに席があるところもあれば、わずかに横にずれて配置されている部分もあるんです。視認性の工夫という面もありますが、構造上の柱や建物の躯体による制約が大きいのだと思います。
この“微妙な違い”を反映することで、俯瞰で見たときにも不自然にならないよう配慮しています。
ここはコピペを多用しましたが、必要に応じて位置を調整しながら対応しました。
サッカースタジアムの椅子は、空席の状態だと「PEACE」「WELCOME」などの文字にみえるように一部の椅子の色が違う仕様になっています。図面には載っていない情報だったので、現地の写真をもとにひとつひとつ椅子の場所と数を数えながらの作業となりました。

各エリアごとの配色設計
スタジアム、アリーナ、ホテル、オフィス、商業施設を明確に色分けし、さらにその中のトイレやエレベータなど共用の部分、通路部分、店舗部分をどのように色分けするかもかなり重要なポイントです。
使用するメインの配色は決まっていたので、基本的には各色の濃淡で表現をしています。
舗装路面の表示や植栽の反映

上の図は1Fのフロアマップですが、舗装路面のサインや駐車場の枠線、植栽なども図面から拾ってひとつひとつ反映していきます。これらの要素って、あるのとないのでは全然クオリティが変わってきますね。
各建物内の配色はカラフルにしていますが、路面や植栽は本物に近い色を使います。描くことによって一気にそれっぽくなります。
今回は長崎スタジアムシティ様のフロアマップ制作事例をご紹介しました。
お客さま目線の「見やすさ」と「正確性」を両立させることの大切さを、改めて実感しています。
ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。